12. 全然足りない。

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 彼の首筋にギュッと掴まる。  突然しがみついてきた私に、びっくりした修平さんが「杏奈?」と呼んだ。  彼の呼びかけを無視して、彼の鎖骨当たりに顔をグリグリと押し付ける。  「あ、杏奈……どうしたの?」  その問いにも応えずに、より一層腕に力を込めて、彼にピッタリとくっついた。隙間を埋めるように自分の体を押し付ける。  すると、彼の体がピクリ、と小さく跳ねるのを感じた。  「杏奈、だめだ……」  私の肩をそっと掴んで、自分から引き離そうとする彼に、イヤイヤと駄々をこねるように首を左右に振る。ピッタリとくっつけた顔を振ると、私の唇が彼の鎖骨をなぞったようになった。  「杏奈っ!それ以上くっつかれると…!」  力付くで無理やり私を引きはがして、切羽詰った声を上げた修平さん。  仰ぎ見る瞳が欲望に濡れて揺らめいている。  苦しそうに眉を寄せた彼は、少し怒ったような顔をしているのに、私と目を合わせようとしない。  私はスッと伸びあがって、その唇に自分の唇を合わせた。  一瞬触れ合わせただけで、さっと身を離す。そして目を見張って固まっている修平さんに、私は告げた。  「私だって……修平さんが全然足りないんだよ」
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