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彼の首筋にギュッと掴まる。
突然しがみついてきた私に、びっくりした修平さんが「杏奈?」と呼んだ。
彼の呼びかけを無視して、彼の鎖骨当たりに顔をグリグリと押し付ける。
「あ、杏奈……どうしたの?」
その問いにも応えずに、より一層腕に力を込めて、彼にピッタリとくっついた。隙間を埋めるように自分の体を押し付ける。
すると、彼の体がピクリ、と小さく跳ねるのを感じた。
「杏奈、だめだ……」
私の肩をそっと掴んで、自分から引き離そうとする彼に、イヤイヤと駄々をこねるように首を左右に振る。ピッタリとくっつけた顔を振ると、私の唇が彼の鎖骨をなぞったようになった。
「杏奈っ!それ以上くっつかれると…!」
力付くで無理やり私を引きはがして、切羽詰った声を上げた修平さん。
仰ぎ見る瞳が欲望に濡れて揺らめいている。
苦しそうに眉を寄せた彼は、少し怒ったような顔をしているのに、私と目を合わせようとしない。
私はスッと伸びあがって、その唇に自分の唇を合わせた。
一瞬触れ合わせただけで、さっと身を離す。そして目を見張って固まっている修平さんに、私は告げた。
「私だって……修平さんが全然足りないんだよ」
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