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私のその台詞に修平さんはさらに大きく目を見開くと、勢いよく上半身を起こし、私を抱えたままソファーから立ち上がった。
「きゃあっ!」
突然の浮遊感に驚いて、彼の首にギュッとしがみつく。
修平さんは無言で、私を抱き上げたままスタスタと部屋を横切っていき、器用にドアを開けて廊下に出た。
鈍い私にも、彼がどこへ向かっているのか分かってしまう。
思った通り、彼が足を止めたのは彼の部屋の前だった。
「杏奈……このドアを開けたら、俺はもう自分で自分を止められない。嫌ならここで俺から離れて……」
静かな声が降ってきて、顔を上げた。
そこには、その声とは反対に情熱を秘めた瞳が見下ろして。
ごくり、と喉が鳴る。
彼との隙間をなくすように、回した腕に力を込める。
これから自分に起こることを想像すると、心臓がうるさいほど音を鳴らしているけれど、私はそれを振り払うように左右に頭を振った。
「わ、わたし……もう、はなれたく…ないの」
途切れ途切れに喉から振り絞りながら、なんとかそう告げる。
彼は何も言わず、私を抱えたまま、部屋のドアを押し開けた。
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