12. 全然足りない。

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   何もかもが初めてで、分からないことだらけの私には、修平さんのすること全てに身を委ねることしか出来なかった。  彼の手と口が、確かめるように私に触れる。彼に見られたり触れられることが恥ずかしくて堪らないのに、不思議と「やめてほしい」とは思わなかった。  私が初めての感覚に堪えきれずに声を上げると、「可愛いよ」「もっと杏奈を見せて」――そんな甘い言葉を耳元で囁かれる。その度に胸がきゅんとうずいて、彼のことが愛しくなる。  未知のことに「怖い」と思って体が強張ってしまうと、それを敏感に感じ取った修平さんは、私に何度も口づけをしながら、私の心と体をほぐしてくれた。  それまでに探し当てた私の弱いところを、「これでもか」というくらい唇で責める。腰が砕けそうなほどの強い刺激を与えられ、体に力が入りきらなくなるまで攻め立てられると、何も考えられなくなってしまい、緊張が解けると、私の体の新たな所に彼が触れている。  そんなふうにじっくりと時間をかけて慣らされ溶かされていった私の体は、もう力を入れることが出来ないくらい、ふにゃふにゃになっていた。 口からは荒い息しか出てこない。目じりには、何度も強い刺激に耐え切れずに声と一緒にこぼれ落ちた涙の跡が残っている。  そんな私のことを、欲に濡れた彼の瞳が見下ろしている。  彼の上半身は何も着ていない。逆三角形の上半身には、その胸板に程よく筋肉がついていて、二の腕も太くて硬そうだ。  綺麗……。  ぼんやりと霞がかった思考の中でそんなことを考えた。  今の自分の状況すら忘れて、その腕に指先を伸ばした。  「杏奈」  私の伸ばした手を掴んだ修平さんが、その指先に口づける。  そしてそのまま指を絡ませて、また手首の内側にキスをした。  「杏奈、愛してる」  そして、濡れたように光る瞳を細めて私を見下ろす彼と、ゆっくりと一つになった。
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