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昨日は、仕事から帰宅してすぐそういうことになってしまったので、私はお風呂はおろか、顔すら洗っていないまま。すなわち化粧も落としていない。
きっと見るも無残な顔面になっているに違いないと思うと、血の気が引きそう。
仕事の汚れも落とさなければとも思うのもあって、すぐにでもお風呂へ飛び込みたくなった。
あんなことになるんだったら、シャワーだけでも先にさせて貰えばよかった……。
そんな余裕なんて私にあるはずは無かったけれど、昨夜のことでそれだけが悔やまれる。
「あの……、私、お風呂に行ってくるね……」
修平さんから体を離して、手元にあるタオルケットを肩から被ってベッドを降りたその時。
「きゃあっ」
床に着いた足が全然立たず、私は砕けたようにその場に座り込んだ。
「な、なんで……!?」
「ああ…ごめんね、杏奈。ちょっと無理させちゃったかも……」
頬をポリポリと指で掻きながら申し訳なさそうにそう言った修平さんが、ベッドから降りる。見上げた彼は、ボクサーパンツしか履いておらず、私は慌てて顔を伏せた。
すると私の前にしゃがんだ修平さんは、私の背中と膝裏に手を回し、私を軽々と持ち上げた。
「きゃあっ!―――しゅ、修平さん!?」
「お詫びにお風呂まで連れて行くよ」
「ええっ!?」
「本当は一緒に入って洗ってあげたいところだけど、また杏奈が欲しくなるから今日は我慢しとく。次のお楽しみに取っておくから、よろしく」
じょ、冗談だよね!?
私を抱えている彼の顔を見上げると、至極真顔の彼と目が合った。
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