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修平さんが私を運んだのはゲスト用のシャワールームではなくて、彼がいつも使っているバスルームだった。
パウダールームの椅子に私を降ろした彼は、「ちょっと待ってて」と言ってバスルームに入っていく。少しすると勢いのよい水の音が聞こえてきて、彼が湯船にお湯を張ってくれてるのだと分かった。
バスルームから出てきた彼が、棚の上からタオルとバスローブを出している。
「これ、使ってね。杏奈の下着とかも部屋から持ってきてあげてもいいけど、さすがにまだそれは恥ずかしいかな?」
「む、無理!」
「あははっ、だよね。何か他にいるものがあれば取ってくるけど?」
「大丈夫…ありがとう」
「うん。じゃあ、もうすぐお風呂が沸くと思うから、俺はリビングにいるから、何かあったら呼び出しボタンを押して」
「うん、分かった」
「じゃあ、ごゆっくり」
そう言って、修平さんはパウダールームから出ていった。
力の入らない足を何とか奮い立たせて、至る所に手を添えながらなんとか入浴を終わらせて、バスルームから出る時には最初よりはましに歩けるようにはなっていた。
修平さんの用意してくれたバスローブを羽織りながら、ふと「そう言えば、私の着ていた服ってどこだっけ……」という疑問が頭に湧いた。
けれどすぐにその答えが頭に浮かび、めちゃくちゃ焦った。
修平さんの部屋に脱ぎっぱなし…!
すぐに回収しなければ!と焦りながら足元を見ると、ランドリーバスケットの中に見覚えのある服が。私が着てた服だ!と持ち上げてみると、中からポロリと下着が落っこちた。それは修平さんの部屋に脱ぎ散らかされていたはずのもので―――。
「~~~っ!」
声もなく絶叫した。
せめて下着くらい回収してから風呂に入れば良かったと、後悔と羞恥の嵐に襲われた。
いったん自分の部屋に戻って新しい衣服に着替えたわたしは、リビングに戻る。
昨夜のあれこれや、ついさっきの失敗が恥ずかしすぎて、修平さんの顔をまともに見れるか自信がない。
ドキドキしながらリビングの扉を開けた瞬間、甘い匂いに包まれた。
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