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甘い匂いをスンスンと嗅いでみると、キッチンの方から声が。
「もう上がったの?でもちょうど良かった、今パンケーキが焼き上がったんだ。杏奈食べれそう?」
「パンケーキ!?」
「うん。もしかして嫌いだった?」
「ううん、大好き!」
飛びつくようにダイニングテーブルに行くと、そこには焼き立てのパンケーキが湯気を立てていた。
「美味しそうっ!」
「冷めないうちに食べよう」
両手にコーヒーカップを持った修平さんに促されて、テーブルに着いた。
修平さんの作ったパンケーキは本当に美味しかった。
昨日の夜から何も食べていなかった私は、バターとメープルシロップをたっぷり塗ったパンケーキを三枚も平らげた。
「美味しかったぁ~!」
満腹で満足な私が、修平さんが目の前にいることも忘れてそう言うと、「喜んでもらえて良かった」と彼が笑う。
あんまりにも自然体な自分が恥ずかしくなって、コーヒーカップに口を付けるふりをして彼の方をうかがった。
だけど彼の方はそんなことはお見通しのよう。私のその視線を受けて「クスっ」と笑う。
「ところで杏奈の今日の予定は?お休みだって言ってたよね」
「ああっ!」
修平さんの質問に大きな声を出してしまって、私はちょっと肩を竦めた。
「ごめんなさい、伝えるのを忘れてました……。今日は夕方から予定があって……、だから明日まで二連休でお休みを貰っていたの。実家の用事だから、今夜はそのまま実家に泊まることになってたんだった……」
それを聞いた修平さんは、軽く目を見張ったあと眉を下げた。
「そっか。そういうことなら、今日は俺がアンジュと留守番だな」
「ごめんね……。そう言えば、修平さんは今日はお仕事は?まだ行かなくて大丈夫なの?」
「今日は代休。土曜も日曜も出勤したらね」
「そっかぁ……ゆっくり休んでね?」
私がそう言うと、ちょっとつまらなそうな顔をして、
「杏奈がいないと、休めそうにないなぁ」
と呟く。
拗ねた子どもみたいなその表情に、胸がキュンと鳴った。
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