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二人の遣り取りを聞いているうちに、私の中の何かがプツンと音を立てて切れた。
「いいかげんにしてパパっ!修平さんもっ!!」
二人の動きが一瞬にして止まった。
「パパ…?」
「杏奈……」
両目と口をポカンと開けた修平さんと、とろけるような笑顔を浮かべて微笑むヒロ君に、私はもう一度大きな声で言った。
「二人とも……私の話をちゃんと聞きなさいっ!!」
「「はい!」」
二人の声がピッタリと合わさった所で、私は肩の力を抜いて「は~~~~っ」と長い息をついた。
「ヒロ!―――あら、杏奈も。どうかしたの?」
私たちから少し離れたところから、その声は聞こえた。
その声の方に顔を向けると、一人の女性が私たちの方へ歩いてくるのが見えた。
黒縁眼鏡をかけて、緩いウェーブのかかった背中まである髪を揺らしながら私たちのところまで来たその人は、私の母、由香梨だった。
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