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「隆弘は私の再婚相手なんです。杏奈の本当の父親とは、この子が二歳の時に離婚してそれっきりで……。今はどこで何をしているのか私も知りませんし、杏奈は会ったこともありません」
「そうだったんですか……隆弘さんはとてもお若いな、とは思ったのですが……」
「俺はこれでも三十八だぞ」
「えっ!!…俺の少し上くらいだと思ってた……」
修平さんが驚きのあまり、砕けた口調になった。
彼が驚く気持ちがよく分かる。
昔から父は若く見られるのが常だった。
もちろん私の父親としては三十八歳でも若すぎるから、昔はよく兄妹に見られていたのだけど、年を重ねてからもその容姿はあまり変わらず、最近では私と二人で歩いていると恋人同士に見られることがほとんどになっていた。たぶん腕を組んでいるのも、勘違いされる一因であるとは思うけど。
そして父の容姿は若いだけでなく、とても素敵なのだ。彼に初恋をした私が言うのもなんだけれど、人気俳優にも劣らないくらい、だと思う。
百八十五センチとスラリと高いのは背だけでなく、手も足も長い。垂れ気味の二重の瞳と厚めの唇の間には、筋の通った高い鼻があって、全体的にバランスが整っている。
本人は若く見られすぎるのを気にしているようで(母が年上だから、釣り合いたいらしい)、最近では口ひげを伸ばすようになった。
それはそれで彼に『大人の男の色気』を加えてますます魅力的になったと思うのは、娘の欲目だけじゃないはず。
私が年頃になると、喫茶店にやってくる父のファン達に勘違いされて、嫌がらせをされたこともあった。
けれどすぐに父や常連さん達が気付いて庇ってくれたので、大した被害は受けたことがないのは幸いだった。
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