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どうして、…どうしてヒロ君は私の話をちゃんと聞きもせずに、修平さんにきつく当たるの!?
私は当初、今日は一人できちんとこれまでのことを両親に話すつもりでいた。
私のせいで修平さんが怪我をしたこと、火事の後その彼のうちにお世話係として住んでいること、そして、彼が私の初めての恋人になったこと。
電話じゃなくて顔を見ながら、包み隠さず二人に打ち明けるつもりできたのだ。
もちろん、嘘をついていたのだから、お叱りならいくらでも受けるつもりだった。でもきっと私のことを大事に育ててくれた二人なら、私の選んだ人のことを最終的に受け入れてくれるだろう、と私は勝手に期待していたのだ。
「どうして……なんで私たちの話を、ちゃんと聞いてくれないの…?」
膝の上で勝手に震える両手を見つめながら、声を絞り出す。
「わたし、…ちゃんとお母さんとヒロ君に、修平さんのことを話そうって、そう決めてきたのに……」
目の前に水の膜が張りはじめ、声が震えた。
膝の上の私の手の上に、修平さんの手がそっと乗せられた。
「わたし、いつまでも小さな子どもじゃない…私のこと、そんなに信用してないんなら、もういいっ!ヒロ君なんて、嫌いッ!!」
言い終わると同時に涙のダムが決壊して、勢いよく立ち上がりその場を駆け出した。
部屋の引き戸を開いた時、後ろから「杏奈っ!」と呼ばれたけれど、立ち止まらずにそのまま走り出した。
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