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お店を飛び出したけれど、どこに行けばいいのか分からずに、私は目の前にあった公園に飛び込んだ。
平日の公園は日暮れ時ということもあって人気もまばらで、噴水の音だけが静かに聞こえてくる。
その噴水の脇のベンチに腰を下ろして、涙に濡れた顔を両手で覆った。
「私…なにやってるんだろ……」
修平さんのことを正直に話して両親に理解を求めるつもりだったのに、思わぬ方向に進んでしまったことがショックだ。私の話もろくに聞かずに、修平さんの存在を端から受け付けようとしない父の態度に腹が立った。
でも何よりショックだったのは、いつもは優しく私の話を最後まで聞いてくれる父のことを、幼い時から自分の『良き理解者』だと思ってきたのに、その『良き理解者』に真っ先に裏切られたような気分になっている、自分だった。
「ヒロ君は、私のことをなんでも許してくれるって甘えてたのかな……」
この歳になってまで親に依存していた自分が、あまりに子どもっぽくってショックすぎる。
「しかも『嫌い』って言っちゃったよ……」
明らかな八つ当たりに、自己嫌悪に陥っていたその時。
「ヒロ、ショックで泣きそうになってたわよ?」
「お、お母さん……」
「ここ、いい?」
私の隣を指差した母に聞かれて、私は首を縦に振った。
俯いて黙っている私の隣で、母が「ふふふっ」と笑う声がした。
「初めての『父娘喧嘩』ね」
明るい声で楽しそうに母が言う。
「そ……、そう、だった……かな?」
そう言われて思い返してみると、私は父と言い争いなんてした記憶が無いことに気付く。
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