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部屋に戻ると、「杏っ!」と叫ぶように言いながら父が抱きついてきた。
「ヒロ君……」
「ごめんな、杏。話しをきちんと聞かずにあんな態度をとった俺が悪かった」
「ううん、私こそ……、嫌いだなんて言ってごめんなさい。大好きだよ、パパ」
「あんなぁ~~」
半泣きの父の背中をポンポンと叩いた母が、「さあ、座って。仕切り直しましょう」と明るい声でそう言った。
席に戻るとホッとした顔の修平さんに「おかえり」と言われ、「飛び出してしまってごめんね。ただいま」と返す。
それからすぐにデザートが運ばれてきて、みんなでそれを味わった。
なぜか父の態度が軟化していて、不思議には思ったけれど、その場の雰囲気が和やかだったのでそのことに言及はしなかった。
デザートが済んだ頃合いを見計らって、私は修平さんとの馴れ初めを二人に話した。
階段から落ちた私を庇ってくれたこと。そのせいで彼が足を捻挫してしまったこと。火事のことと、その後の彼からの提案。
そして今は修平さんのことが大事で、彼も私のことをとても大事にしてくれて、一緒にいるとすごく幸せなこと。
順を追って話している間、誰も何も言わなかった。
話をしている私の隣で修平さんが時々温かなまなざしを送って微笑んでくれる。
目の前の母は常時楽しそうで、斜向かいの父は少し寂しそうに眉を下げたままだった。
「最初から本当のことを言わなかったことは、反省しています。ごめんなさい。でも、動けない彼の為に一緒に暮らしたことは後悔してません。私、これからも修平さんと一緒にいたい……。一緒に暮らすことがだめならきちんと他にアパートを借りるから、彼とのお付き合いを認めてほしいの。お願いしますっ!!」
両親に向かって深く頭を下げた。
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