13. ハプニングは忘れたころにやってくる!?

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 「俺からもお願いします。杏奈さんのこと、真剣に考えています。大事にしますので、どうかお付き合いをお許しください」  私の隣で修平さんも頭を下げる。二人で黙って頭を下げ続けた。  「もういい……」  テーブルの向こうから父の低い声が聞こえる。  やっぱり認めてもらえないんだ……。  そう思ったらじんわりと涙が浮かんできた。  「二人の言いたいことは分かった。顔をあげなさい」  言われた通りに顔をあげると、困ったような、でも優しく見守るような瞳とぶつかる。  「杏奈はいつまでも小さなままじゃないんだよな……。いつまでも俺の手の中にいてほしかったけど、そういうわけにはいかないということは、どこかで分かっていた気がする……」  「ヒロ君……」  「瀧沢さん…いや、修平くん」    「はい」    父は修平さんの目をしっかりと見つめて、一呼吸置いてから口を開いた。  「杏奈のこと、よろしく頼みます」  そう言って頭を下げた。  「ありがとうございます」  修平さんも頭を下げ返す。  頭を上げた父が一言、「泣かせたら、絶対許さんけどな」と低い声で付け足したので、隣の母が大笑いした。
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