14. あなたに伝えたいこと。

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14. あなたに伝えたいこと。

[1]    両親と色々とあった、その翌朝。  目覚ましにしている携帯が時刻を知らせる前に目が覚めた。  よく眠ることが出来たのか、頭がすっきりとしている。目を開けると、いつもの景色があった。  いつもの、景色……!?  そこはここ数日ですっかり見慣れた修平さんの部屋だった。  そのことに気付いたと同時に、背中が温かいことにも気付く。私のお腹に太くて骨ばったものが巻き付いている感触がある。後ろからはかすかな寝息が聞こえ、規則正しいそれが、彼がまだ眠っていることを教えたくれた。  えっと、ゆうべって……。  目覚めたばかりの頭をフル回転させて、昨夜の記憶を手繰り寄せる。  お母さんとヒロ君と食事をした後、修平さんの車に乗って帰路に着いて、車の中で彼と話して……。  助手席の窓から景色を見ていたところまでは思い出せるのに、その後の記憶がプツリと途絶えている。    もしかして……あれから私、車の中で寝ちゃったの!?  車で眠った記憶も、それから家に入った記憶もない。瞬きをしたら、瞬間移動で場所も時間も越えてしまったのではないかと思える。  まさか、そんなわけないよね。  最近読んだ小説が超能力もののサスペンスだったからって、そんなことを思いついてしまう自分が可笑しくて「くふふっ」と笑ってしまった。  「なにか面白いことあった?」  寝息をたてていたはずの彼の声が後ろから聞こえる。  首だけ捻ってそちらを向くと、まだ眠そうな顔をした彼が目を薄く開けて「おはよう」と言って、私の頬にリップ音を立てた。
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