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まだ顔の赤みの引かない彼の頭に手を当てて、ナデナデ、と子どもをあやすように動かす。
嫌がられるかと思いきや、彼は目をすがめて気持ちよさそうになすがままになっていた。
「ちゃんとお仕事に行くなら、ご褒美にいいものあげます」
「いいもの?」
「はい」
「杏奈からのキスとか?」
「ええっ!?違うよっ!!」
「くくくっ、それは残念」
すっかり形勢逆転され、私がからかわれるいつもの体制になる。
「あんまりからかうとあげないんだからっ。後で泣いても知らないよっ!」
「ごめんごめん。ゆるして、杏奈」
きゅるん、と子犬の瞳で見られると、ついなんでも許したくなってしまう。
「今回は特別よっ!」
そう言って、おもむろに布団を降りて辺りを見回すけれど、目当てのものがない。
「修平さん、私のカバン、どこか知ってる?」
「ああ。リビングにあるよ」
「じゃあ、早く行こうっ!!」
彼の手を掴んでギュッと引っ張った。そして、二人で朝陽のさすリビングへと向かった。
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