14. あなたに伝えたいこと。

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 上演の二十分前に目的地に着いた私たちは、招待券に書かれている座席番号を探して会場に入った。  上演が近付いたそこは、既に来場者の熱気に包まれている。私たちと同じように、この映画を楽しみにしている人達がこんなに沢山いるんだと思うと、嬉しくなってテンションが上がってきた。  「杏奈、席、ここで間違いない?」  前を歩く修平さんが立ち止まったのは最前列のすぐ後ろ、二列目だ。映画を見るには最適とは言えないけれど、舞台挨拶を見るならきっと一番良い席。しかも最前列は誰もわざと空けておいてるようで、実質二列目が一番前となっている。  「おおいっ、杏、修平くん!ここだ!」  呼ばれてそちらを向くと、父の姿があった。二列目の中央寄りの席で私たちに手を振っている。  「ヒロ君。間に合って良かったよ」  「杏たちが中々来ないからハラハラしてたぞ」  「私がお仕事だったから、修平さんが車で連れてきてくれなかったら間に合わなかったかも」  「隆弘さん、先日はご馳走さまでした」  それぞれに挨拶をしながら、父の隣に私、修平さん、の順に腰を下ろす。  「あれ…?そう言えば由香梨さんは?お席もないようですが、お仕事で来られないのですか?」  「「え?」」  父と私の声が重なる。  私の心臓がドキン、と波打つ。  「えっと、修平さん…」  口を開いた父が、私たちの方を向いて目を丸くする。  「杏、もしかして修平くんに言ってないのか?由香梨さんが、」  「待ってヒロ君っ!ちゃんと私が、」  慌てて父の言葉を遮った時、会場内に大きなブザーの音が鳴り響いた。場内の灯りが落ちて、スクリーンの幕が開く。  始まる直前の、何とも言えない緊張感が好きな私。  スクリーンに公開間近の作品予告が映し出されるのを観ているうちに、今し方のやり取りよりも、本編が始まることへの胸の高鳴りと期待の方が上回っていった。
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