3. 「今日」はまだ終わらない!?

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 それから少し本の話で盛り上がって、コーヒーを飲み終わった頃に腕時計を見ると、もう八時を過ぎていた。  思ったより長居してしまったことに焦ってしまって、慌ててお(いとま)を申し出る。  「お怪我して大変な所に長居してしまい、申し訳ありませんでした。私の連絡先を書いておきましたので、何かあったらご連絡いただけますか?」  そう言って、名刺に自分の携帯番号とアドレスを記したものを瀧沢さんに差し出した。  「分かった。ありがとう」  そう言って彼が受け取った瞬間、私の鞄の中から電話の着信を告げる音が鳴った。    「すみません!」  静かな部屋の中にけたたましく響くその音を止めようと、慌てて鞄を探った。  焦りつつ、携帯を掴んで保留にしようと画面を見ると、普段滅多にかかってくる事のない人の名前が見えて、思わず口に出す。    「管理人さん……」  鳴ったままの携帯を見つめながら呟くと、向かいの瀧沢さんがどうしたの?と言うような目線を寄越した。  「俺なら大丈夫だから、急用っぽいなら取ってみたら?」  そう言われて、「すみません」と頭を下げつつ通話ボタンを押した。  「はい、宮野です」  相手は思った通りアパートの管理人さんで、名乗られた次に言われた言葉に、思いっきり後ろから頭を殴られたほどの衝撃を受けた。  「………は、はい、分かりました。…はい、……そうします。ご連絡ありがとうございました……」  返事をしながら、頭から血の気が引いて行くようで、電話を切った瞬間ふらついた。幸い座っていたから倒れはしなかったけれど。  「どうしたの!?顔が真っ青だよ」  携帯を握りしめながら顔色を悪くして俯いている私に、瀧沢さんは焦ったように尋ねた。  ゴクリ、一度唾を呑み込んでから私は口を開いた。  「へやが…アパートの部屋が、隣の家の火災で、半焼したって……」  瀧沢さんはハっと息を飲んで私を見つめた。    ―――神様、これはもうハプニングの域を超えていないでしょうか。
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