14. あなたに伝えたいこと。

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   舞台の上から誰もいなくなると、場内の明かりがつく。暗さに慣れた目を(すが)めたせいで、瞼のふちに溜まった涙がポロリと落ちた。  「杏奈?」  「あ…、感動しちゃって……」  隣から覗き込んでくる修平さんに、指先で涙を押さえながらそう言うと、彼はジャケットからハンカチを出して涙を拭いてくれる。  「ありがとう……」  「ん」  涙を拭う彼の瞳が優しくて、なんだかもっと泣きたくなった。  「杏、泣くのはもう少し待ってろ。どうせこの後も泣くことになるんだろうからな」  「ヒロ君……」  「ほら、行くぞ。終わったら顔を出すって言ってあるから、きっと待ってると思うぞ」    「うん、分かった」  私とヒロ君の会話を聞いていた修平さんが、一人会話に着いて来れずに首を捻った。  「杏奈、行くって、どこへ?なにかこの後にも予定があるの?」  「えっと、修平さん、ちゃんと説明しようと何度も思ってたんだけど……」  「おいっ、急ぐから早く着いて来い。どうせ行けば分かるから。説明はそれからでもいいだろう」  先に歩き出した父に急かされて、私たちは急いでその後ろを着いて行った。 ***  「え?そっちは、」    父は『STAFF ONLY』と書かれた扉を開けると、私の隣を歩いている修平さんがすこしびっくりしたようだった。 そんな声はまったく気にせず、父は関係者用通路をスタスタと歩いて行くから、私たち二人はその後ろを追いかけるように着いて行く。    立ち止まった扉には『橘ゆかり様 控室』とあった。  「え?橘ゆかり、の!?」  目を丸くする修平さんがそう言うと同時に、父はその扉をノックする。中から「どうぞ」と声がして、父が扉を開けた。  開いた扉の内側に、さっき見たばかりの着物姿があった。
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