14. あなたに伝えたいこと。

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 「……りも、好き?」  「え?」  私の声が小さすぎたのか、彼には届かない。    「『橘ゆかり』よりも、好き?」  今度は聞こえるようにハッキリと言った。  言ったものの──いや、言ってしまったからこそ、自分で自分が恥ずかしくて堪らなくなった。  どこの世界に自分の母親に嫉妬する彼女がいるのよっ!  そう。つまり私は母に嫉妬しているのだ。単なるヤキモチ。  そんなつまらないことで、いちいち彼を問い詰めてしまう自分の幼さに嫌になってしまう。  情けなくて恥ずかしくて、目のふちに涙が溜まってくるのを感じていると、突然体がグルッと回された。  「っ!」     声を出す暇もなく、彼に抱きすくめられる。  ギュウギュウと腕に力が込められて、苦しさのあまり声が出た。  「く、くるしい…修平さん」  腕の中でもがくと、その腕が少し緩む。私は大きく息を吸い込んだ。  「杏奈、可愛い」    頭の上から降ってきた言葉に、顔を上げる。  そこには、蕩けるほどの笑顔の修平さんの瞳とぶつかった。  「杏奈、可愛すぎ」  二度も『可愛い』を連発されて、カーッと血の気が走る。  「可愛くないっ!さっきからずっと、可愛くない態度ばかりとってるもんっ!」  ここに来る前からの自分の態度を振り返っても、可愛い要因なんてひとつも見当たらない。  修平さんは、『可愛い』って言えば私の機嫌が直るって、そう思ってるんだ。  またしても、お腹の中がムカムカしてきた。
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