6071人が本棚に入れています
本棚に追加
/271ページ
「なにが?」
「……色々。母のこと、黙っていたこととか、一人で勝手に怒っていたこととか……」
彼の胸に顔を埋めて、モゴモゴと謝る。
「これくらいのヤキモチは大歓迎。由香梨さんのことは、……正直言って、驚きすぎた」
「……だよね、…ごめんなさい」
「色々、聞きたいことはあるけど、……杏奈」
修平さんは、一旦言葉を区切って私の名前を呼んだ。彼の胸に顔を埋めたままの私は、小さく肩を跳ねさせた。
お母さんが『橘ゆかり』だってこと、今までずっと黙っていたのは私だもん。修平さんにちゃんとそのことを話さないと………。
「杏奈、顔を上げて」
「………」
恐る恐る顔を上げると、いきなり唇を重ねられた。
しっとりと重なる口づけが甘い。
優しくくすぐるような唇からは、私のことを大事にしてくれているのが伝わってくる。
彼から唇を吸われたり舌先でくすぐったりされるうちに、知らず知らずのうちに体の力が抜けてきて、脱力した体を彼の腕に預ける。
甘い甘い蕩けるような口づけから私を解放した彼に、体を優しく抱きしめられた。
「杏奈、好きだよ」
耳元で囁かれると、足元から崩れ落ちそうになる。
彼はいったいどれだけ私のことを溶かしきればいいんだろう。
頭がぼうっとして何も考えられない。
最初のコメントを投稿しよう!