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15. ことのむすび。
体が重い。
まるで体中に鉛を詰め込まれたみたいだ、と思いながらゆっくりと寝返りを打とうとした。
「ぃっ……」
妙に節々が痛かった。それなのに、なぜかとても幸せな気持ちで満たされている。
「う…うぅ~ん……」
唸り声みたな音が喉の奥から出た。まぶたを持ち上げようとするけれど、なかなか開かない。
「…な、」
誰かに呼ばれている。
「…んな」
いや、まだ起きたくないの。
声がするのとは逆の方に身を捩ろうとした時、額に柔らかい何かが触れた。
「あんな」
その声に、閉じていた瞳を何とか開く。
「杏奈、そろそろ起きないと、遅刻だよ」
その言葉に上体を勢いよく起こした。
「え、ええっ!今何時!?ここどこっ!?」
突然起き上がって、キョロキョロと辺りを見回す私を、ベッドサイドの修平さんが「あははっ」と笑った。
「今は朝七時で、ここはホテルの部屋。朝食が来てるから一緒に食べよう、杏奈」
そう言って、私の頭を引き寄せて頬にリップ音を立ててキスをする。
「そのままの姿でも俺は嬉しいけど、朝食の前に杏奈を食べたくなるから、服を着たらこっちにおいでね」
彼はそう言い残して、ベッドルームから出ていった。
見下ろした自分の姿が一糸纏わぬあられもない姿で、ベッドルームに私の悲鳴が響き渡った。
慌ててベッドから降りて自分の服を探していると、ベッドサイドのソファー真新しい洋服一式が置いてあることに気付く。それ以外は私が着れそうなものが何一つ見当たらず、とりあえずそれを着て、彼の待つリビングルームへと足を向けた。
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