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「クゥ~~ン」
アンジュはもう一度小さく鳴くと、扉のところまで歩いて行って立ち止まり、私の方を振り返った。
私がじっとそれを見ていると、アンジュも扉の前で立ち止まったままじっとこちらを見ている。
「ついてきて、てこと?」
ベットからそっと降りて、アンジュの後をついて行った。
長い廊下をアンジュの後ろを歩く。犬の足の爪は猫と違って出たままなので、廊下を歩くと「カチカチ」と音がする。
その音に導かれるよう着いて行くと、一番奥の部屋の前で彼女はピタリと止まり、スッと腰を落としてお座りをした。
アンジュの隣に立ち、彼女を見下ろす。だけどアンジュはこちらに顔を向けることなく、まっすぐにその視線をドアの奥に向けていた。
その瞳は何かを心配するように光っている。
私はそんなアンジュの瞳に何かを感じて、そっと扉を少し開けた。
「う、うぅぅっ、、、」
部屋の奥からかすかに食いしばるようなうめき声が聞こえる。
思い切って扉を大きく開いて部屋の奥を見てみると、そこにはベットに横たわって苦しそうにしている瀧沢さんの姿があった。
「た、瀧沢さんっ…!大丈夫ですか?足が痛むんですか!?」
急いで彼に近寄ってみると、彼は痛みに耐えるようにうずくまっている。
ギュッと固く閉じた瞳に、眉間には深いしわ。
痛みに耐える為に握ったのか手元のシーツには沢山のしわが寄っていた。額には大粒の汗が幾つも浮かんでいる。
「痛み止めが切れたのかも……」
そう思い到ると、慌てて部屋を飛び出してキッチンへと向かった。
たしか、瀧沢さんは薬の入った袋をキッチンのカウンターに置いていた!
急いでキッチンに行き電気をつけると、処方薬の入った袋は思った通りの場所に置いてあった。
冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出して、グラスと一緒にお盆に乗せると、薬の袋と一緒に急いで瀧沢さんの部屋に引き返した。
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