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スーッと体から熱が引いて、頭の中がクリアになる。
瀧沢さんの体を引き起こして、頭と背中の下に近くに有ったクッションを入れて高くした。
薬の中から鎮痛剤を出して、瀧沢さんの口に当てた。
瀧沢さんの唇が指に当たって、またカッと血が上りそうになったけれど、「これは病人の看病で、恩返しの仕事なんだ」と自分に言い聞かせて、なんとか冷静さを取り戻す。
だけど、痛みのせいで歯を食いしばっているのか、彼の口は引き結ばれたまま。なかなか開けてくれない。
何度か「瀧沢さん、口を開けて下さい」と言ってみるが、やっぱり変わらなかった。
「どうしよう……」
再び途方に暮れていると、私の右肩にトンっと温かいものが当たった。
アンジュだ。
さっきまではベッドの下で座ってジッと私を見ていたのに、急にベッドに上がってきてどうしたんだろうと思っていたら、彼女は瀧沢さんに顔を寄せて、顎の辺りををペロペロ、と舐めた。
すると瀧沢さんの眉間が緩み、くすぐったそうに「ふふっ」と笑った。
今だ!!
すかさず薬を口の隙間から押し込んで、口元に水の入ったグラスを当てた。
すると、喉が渇いていたのか、瀧沢さんはゴクゴクとグラスの半分ほどの水を飲み干した。
「良かった…」
思わず、ホッとした息と共に肩から力が抜ける。
瀧沢さんの下からクッションを抜き取って、また彼の体をベッドに横たえて、そっと布団を掛けなおした。
ひとまずは安心だけれど、まだ薬が効き始めるまで時間が掛かる。
水を飲んで少し楽になったのか、彼の眉間にはしわは寄っていないけれど、相変わらず汗をかいて苦しそうだ。
「そうだ……」
私はまたキッチンへと踵を返した。
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