4. 恩返しさせてください!

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――――――――――――――― ―――――――――― ―――――  「何かあったらご連絡いただけますか?」  そう言って差し出された彼女の名刺を受け取ると同時に、彼女の鞄の中で携帯電話が鳴り出した。  焦って携帯を取り出した彼女は、携帯の画面を触ろうとした指を一瞬躊躇うように止めた。  どうやら、管理人さんからの電話のようだった。  電話を取ることを促すと、彼女はおずおずと耳にそれを当てた。  俺は電話の会話から意識を逸らすように、手元の名刺に目線を遣った。  『司書 宮野杏奈』  市立中央図書館の文字の下にはシンプルにそう入っていた。  名前の下には、彼女の手書きで携帯番号とアドレスが記入してある。  綺麗な字だな、と思った。  綺麗、というよりも可愛らしい、と表現するのがピッタリな彼女の容姿や人柄からイメージした丸っこい字ではなくて、柔らかいけれどスッキリした読みやすい文字。  なんとなくその文字をいくらでも飽きずに眺めていられそうな気がした。  「ご連絡、ありがとうございました……」  目にしている文字とは反対の硬い声がして、顔を上げた。  目線の先には、今にも倒れそうなほどに顔を青くした彼女が。  「どうしたの!?顔が真っ青だ…!」  携帯を握りしめた彼女の尋常じゃない様子にビックリした。  そしてその返答に、更に驚かされることとなる。    「へやが…アパートの部屋が、隣の家の火災で、半焼したって…」    思わずハッと息を飲んだ。
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