6103人が本棚に入れています
本棚に追加
[3]
肩をトントン、と叩かれている感触で眠りから意識が浮上した。
まだつむっていたい瞼をそっと押し上げると、目の前いっぱいに彼の――瀧沢さんの顔があった。
「きゃ~~~~~!!!」
悲鳴にも似た声を上げて、後ろに尻もちをついた。
顔から火が出そうだ。
「大丈夫?ゴメン、驚かすつもりじゃなかったんだ。こんな所で寝ていると風邪引くよ。こんな足じゃなかったら抱き上げてベッドまで運んであげたんだけど……」
申し訳なさそうに謝られて、部屋を飛び出したいくらい恥ずかしい。
頭から湯気が出そうなくらい赤くなってしまった顔を見られたくなくて、両手で顔を覆って下を向いた。
私、あのまま寝ちゃったんだ……。
ゆうべ、鎮痛剤が聞くまでの間、瀧沢さんの汗を拭いたり足を冷やしたり、思いつく限りの対処をした。
三十分も経つと、薬が効いて穏やかな寝息が聞こえてきてホッとした。
それで、そのまま……
「す、すみません…!勝手にお部屋に入ってしまった上に、こんな所で眠ってしまって……」
「なんで謝るの?俺が苦しんでたから看病してくれたんだよね?ありがとう。君のおかげでとっても楽になったよ」
「本当ですか?」
ホッと肩から力が抜けるーーーと同時に、私の頭をグリグリと撫でられた。
一瞬何をされてるか分からなくて、思わず顔を覆っていた手から目を上げる。
パチパチとまばたきをした目に、瀧沢さんのすごく嬉しそうな笑顔が映った。
彼の背後の窓から差し込んでくる朝陽がまぶしい。
時間にしたらものの数秒、だけどわたしにとっては時間が止まっていたのかと思うほど、朝陽と彼の綺麗な顔に釘付けになっていた。
「宮野さん?」
どうしたの?、と問うように首を傾げながら名前を呼ばれて我に返った。
カーッと頬に血が集まるのを感じる。
い、今……頭ナデナデされた!?
人生初の「頭ナデナデ」に呆然としてしまう。
瀧沢さんはそんな私を見て「クスっ」と笑った後もう一度サラっと私の頭を撫でて、「俺、シャワーしてくるから」と言って部屋を出て行った。
私はしばらく頭に残った感触に、動けないでいた。
最初のコメントを投稿しよう!