5. 大義名分いただきます。

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 「しゅ、しゅ、~~っ、やっぱりダメ…!言えませんっ」  顔を両手で覆って、思いっきり俯いた。  は、恥ずかしすぎる……。  同級生の男の子すら苗字でしか呼んだことのないのに、出会って一日しか経っていない男の人を名前で呼ぶなんて……。    「うん、頑張って。俺もこれは譲れないから」  瀧沢さんの声が、なんとなくちょっと楽しそうな感じ。  もしかして、からかってる…?  少しだけ目線を上げて手の隙間から彼を見ると、少しだけ口の端を上げて笑っていた。  むむむ……なんだかちょっと悔しくなってきた。  私ばっかり振り回されている感じがする。    この家で瀧沢さんのお世話をすると決めたのは自分だ。  腹を括らねば…!    ガタン、と思いっきり椅子を引いて立ち上がった。  「わ、私、職場に電話してきます。お茶ご馳走様でした。後で洗いますので、そのままにしておいてください、しゅっ…修平さん…!」  言い終わると同時に、私はゲストルームへと飛び込んだ。    脱兎のごとくその場から逃げ去った私には、その後の瀧沢さんの呟きは耳に届かなかった。    「くっくっく……、逃げられちゃった。敬語も無し、って言ったんだけどな。まあ今回はいっか。ホント、可愛いな。アンもそう思うだろ?」  頭を撫でられたアンジュは、尻尾を振って小首を傾げながら自分の主を見上げる。  その耳がほんのり赤くなっていたことは、アンジュだけしか知らない。
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