6. 自分で頑張るって決めたから……

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6. 自分で頑張るって決めたから……

 [1]  今日二度目になる桜並木の河川敷を、今度は自転車で自宅アパートへと向かった。自転車は瀧沢さんが貸してくれたもの。私のは昨日からずっと図書館に置きっぱなしだ。  瀧沢さんの家から私のアパートに向かう途中に、私の職場――図書館があるという位置関係に気が付いた。  通勤通学の人、散歩の人――色々な人が桜並木の下を行き交っている。  早朝の静謐(せいひつ)な空気の中で咲く桜も素晴らしかったけれど、陽が上って活動が始まった今時分の雰囲気も好き。  いつも通勤で通るのと同じ時間、同じ道なのに、進む向きが違うだけで新鮮に感じるのが不思議だった。  穏やかな春風を受けて自転車を漕ぎつつ、私は朝のひと幕を思い返した。 ――――――――――――――― ―――――――――― ―――――      瀧沢さんが入れてくれたほうじ茶を飲んだ後、彼の要望に頑張って応えた結果、私はあまりの羞恥に耐えきれずに部屋に逃げ込んだ。    ドキドキと鳴り続ける胸を押さえて、呼吸が落ち着くのをジッと待つ。  そうしているうち、私はとある(・・・)ことを思いついた。  「電話、入れなきゃ……」  私の今日の勤務は遅番だから、十一時半までに図書館に着けば十分間に合うだろう。  けれどアパートの部屋を見に行った後には、やらなければならないことがきっと沢山あるはずだ。    もしかしたら出勤時間に間に合わないこともあるかもしれないし、上司の何かの許可を取らないといけなくなるかもしれない。  まず第一報を入れなければ。    昨日、火事の連絡を管理人さんから受けた直後は、完全にパニックになってしまってそんなことは考えられなかった。  けれど、今朝アンジュと散歩に行ってからは気持ちが落ち着いてきたのか、少しずつだけど頭が働くようになってきた。  アンジュとの早朝散歩が、私の身も心も洗ってくれたのかも。  
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