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一人暮らしを始める時に、この本棚を置くことが私の中の絶対条件で、そのためにソファーを断念したのだ。
本棚には、日々厳選してきたお気に入りの本がぎっしりと上から下まで入っている。
その本棚も、そして数々の本も、完全に浸水している。
棚の端からはまだポタポタと水滴がこぼれていた。
「~~ううっ…」
思わずうめき声がこぼれた。
な、泣かない…頑張るって決めたんだもん。
心の中で自分に言い聞かせて、歯を食いしばる。
「そうだ!」
ハッと思い出して、机の引き出しを開けて奥から一冊の本を取り出した。
手にした瞬間、分厚い紙がしっかりと水分を含んだ感触に絶望感が広がる。
「なんで、なんでなの!?……なんでこれまで…」
まるでダムの決壊が壊れたかのように次々と涙が溢れだした。
私はもうそれを止めようという気にすらならない。
ポタポタと大粒の滴が幾つも手元の本に落ちる。
水浸しの部屋の中には、私の嗚咽と水滴の音だけが波紋のように広がっていった。
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