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「た、瀧沢さん!?」
「やっぱり一人で行かせるんじゃなかった」
そう言いながら私を包む両手に少し力が入る。
「一人で泣かせるんじゃなかった…ごめんな」
本当に悔しそうなその声を聞いた途端、私の中で何かが弾けた。
「うっ、……うわ~~~んっ!」
顔を隠すこともせず、上を向いてわんわんと子どもみたいに泣きじゃくる私を、彼はギュッと黙って抱きしめてくれる。
泣き声を我慢しようと「ううっ、」と声を詰まらせる私の背中を、ゆっくりと撫でながら
「今は我慢しないで。アパートに行ってからずっと我慢してたでしょ」
と言われて、またしても悲鳴に近い声を上げて号泣した。
どうして彼は私自身が気付かないように目を背けていたことが分かるんだろう。
「自分で頑張る」と決めたから、どんなにショックでも我慢しなきゃ、と思っていた。
だからあの時、涙はこぼれたけれど声に出しては泣かなかった。
泣いたら負け、だと思った。
なのに、彼はそれを見抜いて「泣いていい」って言ってくれる。
「ほ、本もぜんぶぬれてた……だいすきなものも……でもそれよりも『宝物』が、…だめなの、が……いちばんかなしい~~~っ」
わんわん泣きながら訴える言葉は彼にとっては意味不明だろう。
それでも何も言わずに、ただ私を包んでくれている。
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