6. 自分で頑張るって決めたから……

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 「お昼は俺もまだ。部屋に籠って仕事をしてると、よく食事を飛ばすこともあるしね。今日は部屋で本を読んでたんだ。気付いたら2時過ぎてたから、アンジュはどうしてるかな、と思って探しに来たら君の部屋の前に居るのを見つけたっていうわけ。君も立て続けに色んなことがあって大変なんだから、同居初日に無理しない方がいいよ。ちょっと早いけど昼兼夜になるようにデリバリーのピザを頼んどいたから届いたら一緒に食べよう」  立て板に水のごとくスラスラと喋った瀧沢さんは、一拍置いてから「それと、」と言って。  「俺との約束。もう忘れちゃった、杏奈?」  上目使いで首を傾げながら私を覗き込んで、口の端をキュッと上げて笑う。  彼の色気を近距離で浴びてしまった私は、ビクっと肩を揺らして思いきり後ろに仰け反った。  勢いがつきすぎて、仰け反るだけで体が止まらず、ボスっと背中からベッドに沈む。つま先から頭のてっぺんまでが一瞬でカーッと熱くなった。  心臓がドキドキとせわしなく動いて、頭の奥でその音が鳴り響く。  真っ赤になった顔を覆った両手を、追いかけてきた瀧沢さんの手に掴まれた。  彼は私の両手をベッドに縫い付けるように押さえて、上から見下ろして来た。  思っても見ない彼の行動に驚きすぎて、私の心の中は大絶叫を上げているのに、口はギュッと引き結んだまま開けることも出来ない。  ただ爆発しそうなくらいのスピードで動く心臓と、真っ赤になった顔で彼を見上げているだけ。  「俺のこと、何て呼ぶんだっけ?さぁ言って、杏奈」  小首をかしげる様が可愛い、だなんてこんな状況でもそう思わせてしまう彼がちょっと恨めしい。  「~~~~!!」  目を思いっきりギュッとつぶって、鼻から息を吸い込んでから。  「退いてください!修平さんっ!!!」  大きな声で叫んだ。
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