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「ところで修平さん。足の具合はどうなの?まだ痛む…?」
「いや、昨日よりも随分ましになったよ。午前中に一度痛み止めを飲んだけど、もう飲まなくても痛まないみたいだ。力を掛けるのはまだちょっと、だけどね」
「そう……」
「心配してくれてありがとう」
「ううん。元はと言えば私が原因ですから……」
ちょっと俯きがちになった私の頬を、むにゅっと修平さんの左手がつまんだ。
「い、いひゃい……ひゅ、ひゅうへいはん、いひゃいれふ……」
確実にさっきより手に力がこもっている。
「また敬語になってる。お仕置きするって、俺言ったよね」
怒った顔をした彼が、上半身を捻って私に近付く。
ほっぺの指も離してくれない。
私はなんとなく危険を感じて、ソファーの端に逃げようと体を捩った。
でも、すかさず伸びた彼の右腕が、私の体を背もたれとの間に封じ込める。
座ったまま斜め上から近付いてくる彼が何をしようとしているか分からなくて、今までで一番近距離から合わせる彼の瞳から目を逸らせない。
次の瞬間
―――ガブリ
修平さんが私の鼻に噛み付いた。
「~~~~!!!」
鼻を両手で押さえて、大絶叫を上げたつもりが声にならない。
彼はわたしの鼻を解放すると、ソファーの反対側で肩を震わして笑っていた。
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