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「ひ、ヒドイ……」
痛みやら恥ずかしさやらが綯い交ぜになって、プルプルと震えながら懸命に抗議の声を出す。
肩を震わせお腹を押さえながら、身を捩って笑い声を押さえようとする修平さんに、私もついに我慢できなくなった。
「私をからかうのがそんなに楽しいの…!?毎回振り回されるこっちの身にもなってよっ!」
普段声を荒げて怒ることなんてないせいか、興奮で目から涙がぽろぽろと落ちていく。
顔を真っ赤にして泣きながら抗議する私の姿にびっくりした修平さんは、途端におろおろしはじめた。
「ごめん、噛み付いたのはやりすぎた……反省する」
心から反省していると何度も謝られて、私もなんとか気分を取り直す。
「もう、いい。私も約束を守ってなかったから。お互い、気を付けよう」
そう言って彼に目を向けると、彼はホッとした表情をして「ありがとう」と言った。
「それにしても、杏奈が怒ると迫力あるね」
「私、あんまり怒ることってないんだけど、一回怒るとすごく怖いって家族にも言われてるの……」
こんなことで怒りを爆発させてしまうなんて、ちょっと大人げなさすぎたと身を縮める。
「あはは、確かに」
「笑わないで」
ジト目で修平さんを見上げると、
「でも、今のリラックスした杏奈の方が自然体でとってもいいよ。うちにいる間、ずっと今の自然体の杏奈でいて。気に入らないことがあったら、容赦なく怒っていいから」
そう言いながら優しい微笑みを向けてくれる修平さんに、私も「ありがとう」と笑って返事をした。
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