2. 今日の運勢は最下位です。

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 車の中はほのかに爽やかなシトラスの香りがしていた。彼のつけているフレグランスだろうか。  緊張して言葉も出ない割にそんなことを観察するなんて、ほとほと自分に呆れてしまう。  「図書館の自転車置き場でいいかな?」  シートベルトを締めたまま固まって、気の利いた会話も出来ないままあっという間に図書館に着いた。  自転車で五分の距離は、車では三分とかからないらしい。  瀧沢さんは車を滑らかに駐輪場に横付けした後、自転車を降ろしてくれた。  「ありがとうございました」  私は深々とお辞儀をした後、「あの、これ…」と図書館利用者カードを彼に差し出した。  彼は「良かった。カードを返してもらえて」と少し揶揄(からか)うような台詞を言って、微笑みながらカードを受け取った。  ドキリ、と胸が音を立てると同時に頬が熱くなる。  長年本の虫として過ごしてきて、男性とお付き合いというものをしたことのない私にとって、見た目の整った男性に微笑まれるなんて顔を赤くするには十分な出来事だ。  「時間、大丈夫かな?」    赤面してうつむいた私の顔を覗き込むようにしながら彼はそう聞いてきた。  「あっ!」  慌てて腕時計を見ると、始業五分前。  「本当にありがとうございました!」  もう一度お辞儀をしてから彼に背を向け、急いで関係者用の入口の方へと走り出した。  ギリギリの時間に慌ててしまって、走り出したすぐ後の「頑張ってね、司書さん」と言う彼の言葉は耳に入らなかった。
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