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『杏奈、お誕生日おめでとう』
『ありがとう、ママ!』
『杏奈にプレゼントよ。世界に一つだけの杏奈の絵本』
『うわ~~~!!ママがつくったの?』
『ええ。杏奈のことを想って一生懸命描いたのよ?大事にしてね』
『うん!ママ、ありがとう!』
母に手渡された包みを開けると、綺麗に閉じられた一冊の本があった。
その絵本は今まで見たどんな本よりもキラキラと輝いて見えた。
『ねえ、なんてよむの?』
両手で持った本を母に差し出す。
『これは「宝物をみつけに」っていうのよ』
『たからものをみつけに…?』
『そう。早速一緒に読んでみる?杏奈』
『うん、ママ!』
「この絵本を読めるようになってから、私はあんまり泣いて母を困らせることもなくなったらしいの。流石に大きくなってからは読むことも少なくなったんだけど、落ち込んだ時とか、自分を励ましたい時に読むと元気になれるんだ」
「素敵なお母さんだね」
「うん……ありがとう。今でも世界中のどんな本よりもこの本が一番大好きなの。でも……」
両掌にある絵本に目を落とすと、無残な姿にやっぱり胸が痛む。
修平さんの腕の中で沢山泣いたから、今は自分の中で事実を受け入れることが出来ていると思う。
でも「悲しい」と思うことを止められない。
「もし杏奈さえ良ければ、その本を俺に預けてもらえないかな?」
「修平さんに?」
「うん。絶対になんとかする、とは言えないんだけど……」
私が頷くと、彼は私が差し出した絵本をそうっと大事そうに受け取った。
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