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朝と昼の食事の準備が終わると、アンジュに朝ご飯のドライフードをあげて、私たち二人も朝食を食べた。
私が普段食べる朝食の時間よりも随分早かったけれど、朝から料理をして体を動かしたせいか、ご飯が美味しく感じる。
修平さんは私が作った朝食を「美味しい」ってニコニコ食べてくれるから、私は嬉しくなってついつい口数が増えてしまった。
朝からこんなに楽しい気分でご飯を食べたのは、実家を出てから始めてのことだ。
大きな窓から見える庭を朝陽がキラキラと照らしている。
庭の真ん中にはあの桜の樹が。時々ひらひらと舞う花びらが朝陽の中で美しい。
そんな光景を見ながら二人で食べる朝食は、なんだか特別に思えて胸がいっぱいになってしまった。
「今日は杏奈は出勤だったよね?」
「うん。早番だから八時半にはここを出るね。その前にアンジュのお散歩に行ってくるよ」
「朝からアレコレ詰め込んでるけど大丈夫?」
「うん、平気だよ?アンジュとの朝のお散歩、昨日も楽しかったから今日も楽しみにしてるの」
早朝の空気の中、河川敷の桜を見ながらお散歩が出来るのが楽しみだなぁ、と思っていると
「ありがと。杏奈が来てからアンジュも嬉しそうだし、俺も嬉しいよ」
修平さんが優しい顔でそんなふうに言うから、思わず胸が小さく音を立ててしまう。
「そ、そっかぁ……」と曖昧な返事をして、動揺を誤魔化すように味噌汁を口にした。
『私が来たから』嬉しいんじゃなくて、『アンジュが嬉しそうにしているのが』嬉しいってことだよね……。
勘違いしそうになる自分を戒めるべく、心の中で「恩返し恩返し」と呟きながら噛みしめた豆腐を、汁と一緒にゴクンと飲み下した。
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