7. 二人と一匹暮らし、始めました。

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 喫茶店の店内に入って二人でコーヒーを頼んだ。  注文したコーヒーが来るまでの間に、私は事の成り行きをなるべく手短に説明した。  「それって、『恩返し』と『住むところの確保』の利害が一致したってことなの?」  「えっと、……そういうことになります、よね?」  私の説明を聞いた千紗子さんは、そう聞いただけで小首を捻りながら黙ってしまった。    やっぱり、良く知らない男性のお宅に居候させてもらうなんて、良くないことだったのかな……。  私は彼女の反応に、自分のこれまでの行動を振り返って不安になってくる。  なんだか身の縮まる思いがしてきて、膝の上で握った手ばかりを見つめていた。  運ばれてきたコーヒーをブラックのまま一口飲んだ千紗子さんは、「う~ん…」と小さく唸った。  「あの、私…」  どうしたら、と言いかけた所で、「杏ちゃん」と千紗子さんの声に顔を上げた。  「杏ちゃんは、瀧沢さんに嫌な思いをさせられたりしてない?」  そう問うた千紗子さんの瞳は真剣そのものだ。  「嫌な思い、なんて、」  「少しでも不安があったり、嫌な思いをすることがあるなら、私のうちに来なさい」  言いかけた私の言葉を遮った彼女の口調はとても厳しい。でも彼女の瞳に私を心配する気配を感じて、私は口を噤んだ。  「もちろん、助けて頂いた瀧沢さんのお役に立ちたいという、杏ちゃんの気持ちも分かるわ?でも彼は男の人なのよ……今は怪我をしているから身動きも取り辛いかもしれない。でもそれも近日中に治まると思うの。そうなったら、杏ちゃん、怖い思いをするようなことになるかもしれない。そんなことになって欲しくないのよ……」  「千紗子さん……」  「私も彼が悪い方だとは思えないし、思いたくないけれど、やっぱりそれでも心配するわ。だって大事な“妹”のことなんですもの」  厳しい口調を少し和らげた千紗子さんにそう言われて、私は黙って考えた。  確かに修平さんは私をからかったりしてくる。  でも、私が本当に嫌がることはどれだけ近付いていても、したことがない。  むしろ、私が困惑したり「無理」と思いそうになると離れて行った。  それに―――。
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