2. 今日の運勢は最下位です。

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[2]  ギリギリで駆け込んで制服に着替え、何とか業務開始時間に間に合った。  そして慌ただしく午前中の業務を済ませた昼休憩。  私は仲の良い三つ上の雨宮千紗子(あまみやちさこ)先輩と、休憩室でランチを取っていた。  「(あん)ちゃんが菓子パン一つだけだなんて珍しいと思ったら、朝からそんなことになってたのね」  面白がるような声で笑う千紗子さんを恨めしげに見つめて「笑い事じゃないですよ……」とぼやくと、千紗子さんは「ごめんごめん」と言いながら、クスクスと肩で笑う。    千紗子さんは、艶のある腰まで届く黒髪を今は後ろで一つに纏めていた。シュシュではなくキラリと光る飾りのついた髪留めで留めていて大人っぽい。  彼女は、色白で整った輪郭に知的な瞳を持った美人さんで、スラリとした体は細いけれど女性らしい柔らかさは十分。  姿勢の良い彼女が本を持って立っていると、どこかのご令嬢かと思ってしまう時もある。  彼女は蔵書への知識も豊富だし、利用者に対する受け答えも丁寧で分かりやすい。司書としても女性としても、彼女は私にとって憧れの先輩である。    対する私はというと、丸顔に二重の丸い瞳の童顔。いまだに学生と間違えられたりすることも。  髪は染めてはいないけれどダークブラウンで、肩下まである髪はくせ毛で波打っている。就業中はいつもサイドにゆるくまとめてシュシュで括っていた。  背が低めで中肉中背。我ながら至って平々凡々な容姿だな、と思う。    「杏ちゃん、朝から色々あったのにそれだけじゃ足りないでしょう?」  千紗子さんは私の齧り付いているメロンパンを見ながら心配そうに聞いてくれた。  「確かに今日は早番でしたし、開館してからも慌ただしかったので正直お腹ペコペコです……」  今朝の寝坊のせいでいつものようにお弁当が作れず、コンビニに寄る時間すら無かった為、家に有ったメロンパンを鞄に放り込んで出勤した、と今朝の一連のハプニングを彼女に説明する時に話してあった。  
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