7. 二人と一匹暮らし、始めました。

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 門から玄関までのアプローチの途中で、修平さんと女の人のやり取りが耳に入ってきて、思わず足を止めた。  「それじゃあ、置いといたからね。これ返すわ」  「わざわざありがとう、葵。助かったよ」    玄関先でその女性が何かを渡しているのが見えたけど、彼女の背中でそれが何かまでは分から無い。    「何かあったらいつでも遠慮なく言ってよ。その足が早く良くならないと、私も困るんだから」  「そうだな。明日は行けるから、心配しないで」  「じゃあ、また」  振り返ったその人が私を見て「あ、」と声を出した。  その声で私に気付いた修平さんと目が合った。  「おかえり、杏奈」  笑顔を浮かべて私を迎えてくれた修平さんから、なんとなく目を逸らした。  「…杏奈?」  「わ、わたしっ、アンジュの散歩に行ってきます!!」  何となく居た堪れないような気持ちになって、修平さんと目を合わせず足早に自転車を置きに行った。  そして、自転車置き場の隣に掛けてある散歩用のリードを取って、玄関から体を出していたアンジュを呼んだ。  「アンジュ、お散歩行こう!」  『散歩』の言葉に反応して、尻尾を振って駆け寄ってきたアンジュの首輪にリードを繋ぎ、急いでもと来た方へと体を向けた、その時。  「杏奈、散歩は、」  「行ってきます!」  修平さんが何か言いかけたのを振り切るようにして駈け出した。  私は修平さんから目を逸らしてから一度も、彼らの方を振り返らなかった。   
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