7. 二人と一匹暮らし、始めました。

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 目の前の彼は、「心底ほっとした」という顔をして私を見つめている。  両脇に松葉杖を挟んで立っている彼の額には汗の粒が浮かんでいて、いつもは綺麗に整えてあるダークブラウンの髪も、今は心なしか乱れていた。  彼のその様子に、ハッとした。  私のこと本当に心配してきてくれたんだ……。  彼のことを無視して出てきた私が悪いのに……。    さっきまで(こら)えていた涙がポロポロとこぼれ落ちた。  また彼に迷惑を掛けてしまった自分が情けなくて、でもそんな私の為にここまで来てくれた優しい彼のことを想うと胸が苦しくて…。  きちんと謝らないといけないと思うのに、唇がわなないて少しでも口を開くと嗚咽が漏れそうになる。  「泣かないで、杏奈。もう怒ってないから」  修平さんの手が私の涙をそっと拭う。  俯いて泣く私の頬を、大きな手のひらが包んで上を向かせた。私の瞳を捕えたままゆっくりと近づいてくる彼の瞳から目が離せない。  彼の瞳の奥が濡れたように光って、そこに映る自分の顔が揺れている。  鼻先が触れる、その瞬間。  彼の額が私の額にコツンとぶつかった。  「今度からは暗くなったら一人で散歩には出ない、って約束して」  真摯な瞳に至近距離で見つめられて、私は小さく頷いた。
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