7. 二人と一匹暮らし、始めました。

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 日が沈んで薄暗い道を、修平さんの運転する車は滑らかに進んでいく。  時々対向車のライトに照らされる彼の横顔をそっと見つめた。  さっきの女性は会社の人なんだ……。  修平さんの発言から、彼女が会社の同僚で車を届けてくれたことが分かった。  毎日あんな綺麗なヒトを見ていたら、私なんて異性としては対象外だよね……。  だいたい、王子様みたいに素敵な彼が私のことを家に置いてくれるなんて、困ってた私を助けてようとしてくれる親切心以外にあるわけないじゃない。  私に構ってくるのも、アンジュと遊ぶ感覚なのかも。   そんなマイナス思考ばかりが頭を占領する。  「どうした?」  急に声をかけられてハッとした。と同時に、私が彼を見つめていたはずなのに、いつの間にか彼に見つめられていることに気付く。  「俺の顔に何かついてる?」  「う、ううん…何もないよ」  「今日は仕事だったから疲れた?」  「そ、そうなのっ!今日は日曜日で沢山来館者があったから、バタバタしちゃって、それで」  自分の考えていたことを誤魔化すように、仕事の話にすり替えた。  「そっか。お疲れ様」  「あ、ありがとう」  なんだか会話がくすぐったい。  私はこれ以上彼の方を向いていられず、そっと前を向いた。  
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