7. 二人と一匹暮らし、始めました。

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 帰宅するともう七時を過ぎていて、私は慌てて食事の用意に取り掛かった。  今日は冷蔵庫にある野菜で簡単に出来るナポリタン。あとはちょっと手抜きのちぎるだけのレタスサラダだ。  もちろんアンジュにも夕飯のドライフードを準備した。  揃ってダイニングに着いた修平さんと一緒に「いただきます」をしてから食べ始める。  「あ。このナポリタン、美味しいね。結構好みの味だ」  「良かった!私あんまり料理は得意じゃないから、ちょっと心配だったの」  「そうかな?杏奈の料理、どれもとっても美味しいよ。お昼に食べたおにぎりも美味しかったし」  ニコニコとしながら褒め言葉を口にする修平さんに、私の頬が赤くなっていく。  「どれも、ってまだほとんど料理らしい料理なんてしてないよ」  照れ隠しに可愛くないことを言ってしまう自分の口が恨めしくなる。  「じゃあ、これからいろんな料理を食べるのが楽しみだ」  「そんな…あんまりプレッシャーかけないで……」  憎まれ口を叩く私なんかよりも、何枚も上手な返しをしてくる彼をじっとりと見つめると、彼が「ぷっ」と小さく噴き出した。  「修平さん、って見かけに寄らず意地悪なとこあるよね……」    ますますジットリと上目使いになった私を見て彼は目を細めて口の端を少し上げた。  「『見かけに寄らず』、て杏奈から見た俺ってどんななの?」  「え!?」  「今まで『意地悪』とか言われたことないしなぁ」  「どんな、って…最初は爽やかで優しそう、に見えたよ……」  「じゃあ、『今』は?」
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