7. 二人と一匹暮らし、始めました。

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 修平さんの顔に「からかい中」と書いてあるのがありありと見える。  『またそうやって私のことをからかうんだ!?』と思ったら悔しくなってきた。    私だっていつまでもやられっぱなしじゃないんだから!  「今は、『腹黒』って感じ!」  ほっぺたを膨らませてプイッと横を向くと、ほんの少し間が空いてから、「ゴホゴホッ」と咽る音がした。  びっくりして顔を正面に戻すと、苦しそうに胸をドンドンと叩いている修平さんが。  (むせ)るのが治まって水を飲んでやっと落ち着いた、というふうな彼が私の方に目を向けた。  「『腹黒』とか、初めて言われた……」  心なしかショックそうだ。  私はその顔をみてちょっと溜飲を下げる。  「じゃあ『爽やか』とか『優しそう』とかは言われたことあるんだね」  「う~、まあ。それはお世辞とか社交辞令としては一般的だろ?」  「確かにそうね」  すまし顔で言って、彼と目を合わせて同時に噴き出した。  「あはははっ」と二人の笑い声が部屋に響く。  リビングの定位置のクッションで寛いでいたアンジュが、何事かと顔を上げてこちらを見た。   
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