2. 今日の運勢は最下位です。

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 しょんぼりと項垂れる私に「良かったら食べて」と千紗子さんが自分の手作り弁当からおにぎりひとつと玉子焼きと唐揚げを蓋に乗せてそっと私差し出してくれた。  「ありがとうございます!」  美味しそうなお弁当にキラキラと目を輝かせてお礼を言うと、千紗子さんは「どういたしまして」とにっこり微笑んでくれた。まるで聖母が微笑んだような美しさに、同じ女性ながら見惚れてしまう。  千紗子さんからもらったおかずを味わいながら、その幸せそうな顔を見て思わず溜め息がもれた。  「あ~あ、千紗子さんの旦那様はいいなぁ。こんな美味しい愛妻弁当が毎日食べられるなんて羨ましい!」  千紗子さんは去年結婚したばかりの新婚さんなのである。  お相手は同じ市立図書館の上司で、私が就職した時にはこの中央図書館から市内の分館に異動になっていたので、私とは直接の面識はない。  でも、時々会議や用事でこちらの中央図書館にやってくるので、その姿をお見かけしたことはある。  はっきり言って、ものすごいイケメンさん。  千紗子さんと並ぶと文句のつけようのない美男美女カップル、という感じだ。    おかずを味わいながらそう言った私に、千紗子さんはほんのりと頬を染めながらもしっかりと反撃してきた。  「あら杏ちゃん、羨ましいのは『お弁当を作って貰えること』なの?」  言葉はからかい半分なのに、その微笑みがあまりにきれいで、思わず素直に「……素敵な旦那様がいらっしゃることもです」と答えてしまった。
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