7. 二人と一匹暮らし、始めました。

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 「きゃあっっ!!」  私とアンジュしかこの家には居ないはず。それなのに突然声と腕が現れるなんて!  さっきとは違う意味で心臓が暴れている。  それまで以上に青くなってドアの方を凝視して固まっている私に、腕の主が姿を見せた。    「あら、びっくりさせてすみません。はじめまして、ハウスキーパーの佐倉志津子(さくらしづこ)と申します」  下着を持って、挨拶したその人は私の母よりもいくぶん年上で、でも『おばあちゃん』と呼ぶには失礼に当たるほど若々しい。背筋をピシっと伸ばしたその立ち姿は、まるでマナー講習の先生みたいな規律正しさがあった。  「は、初めまして。宮野杏奈ですっ。えっと、私は……」  「瀧沢様のお宅でしばらくお預かりしているお嬢様だとお伺いいたしております」  「お預かり……」    「違いましたか?」  「い、いえ。その通りです!」    前以て修平さんから、「月曜日はハウスキーパーさんが来る日だから」と聞いてはいた。もちろん私のことも伝えてある、と彼は言ってくれていたけど、すっかり私はそのことを忘れていたのだ。  「ところで、先ほどは何か悩んでいらっしゃるようでしたが、どうかいたしましたか?」    「あ!…あの、そ、それ……」    少し頬を赤くしながら、おずおずと佐倉さんの手に持っている下着を指差した。  「これ、ですか?」  佐倉さんは指差された下着を持って広げる。その瞬間「きゃっ!」と声を上げて私は後ろを向いた。
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