7. 二人と一匹暮らし、始めました。

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 ***  「お出汁を取った後の鰹節と昆布は佃煮にするので捨てないんですよ」  「なるほど~。捨てたらもったいないですもんね」  私と佐倉さんは二人でキッチンに立っている。  洗濯物事件の後、彼女は一緒に洗濯物を干してくれた。  洗濯を干しながら「父親以外の男性の下着に触ったことが無い」と言う私を三呼吸分まじまじと見た彼女は、「なるほど」と何かに納得するように頷いていた。    何がなるほどなんだろう……。  そんな疑問が湧いたけれど、手際よく洗濯物を干す佐倉さんに習って、私も黙って手を動かした。    洗濯干しがひと段落した所で、佐倉さんが今日のハウスキーピングの流れを説明してくれた。  洗濯のあとは、掃除、その後は食材の下拵え、いくつかの常備菜も作っておくらしい。  食材の買い出しを済ませてから来たので、それは冷蔵庫にいれてあるとのことだった。  『そのように私は動きますので、宮野様はご自由にお過ごしください』  佐倉さんは次の作業である掃除に取り掛かろうと、荷物の中からゴム手袋を出した。  その瞬間私は閃いた。  『あの!』  『なんでしょう?』  『私に教えてください!』  『え?』  『お掃除とお料理を教えていただけませんか?』  綺麗な姿勢で立っている彼女の目が一瞬点になった。  『お仕事のお邪魔になるのは分かってます…でも、その分をお手伝いで返しますから、私に家事を教えてほしいんです』    『でも……』  『修平さんには後で私から説明しますから。お願いします!』  両手を前で揃えて腰を深く折って頭を下げた。
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