第二幕 十二人目の家臣

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「な……っ!だ、誰だお前は!」  突如として現れた見知らぬ者に、驚くのも無理はない。  合わせていた衣の袖口を解くと、(コウ)は軽く折っていた腰を伸ばしてふっと笑んだ。 「申し遅れました。私は本日よりあなた様の家臣を務めさせていただく者です。煌とお呼び下さい」  嬴政(エイセイ)の見開かれていた切れ長の瞳が徐々に細くなっていく。 「そうか……。では煌、早速お前に申し付けることがある」 「何なりとどうぞ」  流石は、重臣であっても臆することのない姿勢をもつ王子だ。  たかが三つしか歳の離れていない、ましてや新入りの家臣となれば、きっと玩具のように使いたい放題にするのだろう。  偉いご身分でなにより……と心の中で皮肉を呟いた次の瞬間、思いもよらぬ言葉が返ってきた。 「今すぐここから消えろ」 「……は?」  煌は思わず聞き返していた。それが、本来ならば決して許されぬ法度(はっと)だと分かっていても、聞き返さずにはいられない要望だった。  目の前の、この年端もいかぬ少年は、一体なにを言っているのか。
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