第二幕 十二人目の家臣

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「なぁ、(ロン)……」 「ん?」  籠と呼ばれた男は、柔らかな微笑を浮かべ釣り針を触る手を止めた。  彼は、(コウ)が幼い時に亡くなった両親の代わりに、煌を自分の息子と思って育ててきた。  煌もまた、彼を本当の父親のように慕っている。 「籠は、王様のお父上――先王様の家臣だったんだよな?嬴政(エイセイ)王子様について、なにか知っていることはないか?」  あ、でもまだ幼い頃だったから分からねぇか……と小さく一人ごちる煌に、籠は浮かべていた微笑を消し、「昔話で良ければ構わないが……」と切り出した。 「本当に知りたいことは、自分の目で見極めろ。いいな?」 「あぁ。勿論だ」 「……よし」  籠は彼の素直な返答に満足げに頷くと、さて、何から話そうか……と思考を巡らせる。  すると、ふと、花のようにふわりと笑う彼女を思い出した。  かつて"私の人"と慕い、いつの日も飽きることなく恋焦がれた一人の女人。 ――あなたのことも、話してしまおうか……?  そうしたら、少しは楽になれるだろうか。 「……籠?」  こちらを覗き込む訝しげな瞳に、はっと我にかえった籠は、誤魔化すように笑むと、 「さて……今宵は長くなるぞ」  釣り針から手を離すと、頬杖をついてにっと笑んだ煌に開口を切った。
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