91人が本棚に入れています
本棚に追加
確か、王の孫娘である唯仁王女付きの女官として仕えていたはずだ。
「もしや……!」
籠ははっとして王の瞳を見つめる。
「あぁ……。今朝方、唯仁が息を引き取った」
「左様でございましたか……。それで……」
事の成り行きを全て理解し、籠は改めて王の側に控える女官――否、王女の伽耶を見上げた。
唯仁は、この国の唯一の王女だった。しかし生まれつき病弱で、医者からはあまり長くはないだろうと言われていたのだ。
そして今日、ついにその儚い命が散ってしまった。
後に彼女の主治医から聞いた話だが、なんと彼女自ら王に、自分の女官である伽耶を娘にしてほしいと懇願していたそうだ。
ちなみに、"王宮に留まることが決まった"という先ほどの王の言葉の意味は、先日迎えた新年を記念して女官の解放が行われたのだが、伽耶は王女となったのでここに留まる、ということである。
しかし、これほどまでに王女の信頼を得て、王の信用をも勝ち取った彼女は、一体どのような人物なのだろうと、籠は少し興味を抱いた。
するとそのとき、そんな彼女の後ろから、一人の幼い少年がひょっこりと顔を覗かせた。
最初のコメントを投稿しよう!