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チリンと鳴った鈴と共に、羽の耳飾りも揺れる。それがいつもよりも軽やかに聞こえるのは、身につける彼が早足で歩いているからだ。
烈火の如く赤い短髪に、橙色がかった瞳を持つ、彼の名は煌――まだ十五の少年である。しかし、政を知らぬわけではない。
何故ならこの日、彼はこれから仕えることになった王子、つまり現王の嫡子に会いに王宮へと赴くからである。
その王子の名は嬴政といい、今年で十二になるらしい。――なんだまだ可愛らしい子供ではないかと、自分より年下であることに安堵していた煌だったが、これが意外にもなかなか手に負えぬ曲者だというのだ。
なんと、これまで彼に仕えた十人、全員がたった七日足らずで辞めてしまったそうだ。
「……マジで?」
思わず絶句したが、それを聞き、ますます会ってみたくなった。
何故なら、彼らが長く続かなかったわけは、二つに一つだからだ。
「ただの我儘三昧なお坊っちゃまか……或いは天地がひっくり返るほどの鬼才か……」
ふっと薄い唇を弧に描くと、口元の小さなほくろが、どこか妖艶に映る。
「とにもかくにも、会ってみますか……」
春の夜風が、つむじから真っ直ぐに伸びたその赤髪をそっと揺らした。
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