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父は、確かに嬴政の言う通りだ、考えてみようと、昨日受け入れてくれた。
しかし今日、朝議でその話は一言も持ち出されなかった。
何があったのかは分かっている。おそらく母の仕業だ。母が父に口止めをしたのだ。
あれはまだ十一の子供です。ただの戯れ言と、お聞き流しになって下さい。それに……毎日家臣たちを振り回し、迷惑千万な者の言うことなど……逆にどう信じろと言うのでしょうか。
大体このような調子で唆したに違いない。
『ねぇ、そうでしょう……王様?』
『あぁ、そうだな……』
いつの日か見てしまった、戦勝を上げた兵たちへの報酬について、ほぼ無一文同然の額を父に提示する、醜い微笑を浮かべた母。
嬴政が嫌悪を覚えたのは、言葉のやり取りだけではない。
――よりにもよって、情事を利用して唆すなど……!
母への憎悪と嫌悪が一緒くたに押し寄せ、眩暈と吐き気でどうにかなりそうだった。
藁にもすがる思いで、唯一心の支えだった呂不韋にうち明けたが、彼は見間違いの一言ですげなくあしらった。
「クソ……っ!」
込み上げる思いの丈を拳に詰めて、自分の膝を殴ったが、かえって更に虚しくなるだけだった。
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