第一幕 運命の出逢い

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 妻に操られるがままの王。それを見て見ぬふりの重臣。  本当にこの国は腐っている。彼らを変えぬ限り、この国はなにも変わらない。  嬴政(エイセイ)は、こちらを一心に照らし続ける月を、ふと見上げる。  今宵の月は、どこも欠けていない、憎いほど綺麗な満月だった。 ――形が変わっても、お前はいつも私を照らしてくれる……  そのまま暫く月に見入っていると、足音が聞こえてきたので、嬴政ははっと我にかえって背を向ける。 「……呂不韋(リョフイ)、やはり先の縁談の話は受けん。分かったな?」  しかし返事はない。 「おい聞いておるのか?返事をしろ!」  やはり返事はない。 「はっ!ついに返事の仕方まで忘れたのか、この阿呆がっ!!」  痺れを切らし、その勢いのままぐるんと後ろを振り返ったが、そこに呂不韋の姿はない。  代わりに一人の少年が立っていた。  烈火の如く赤い短髪に、橙色がかった瞳。そして鳥の羽をかたどった派手な耳飾り。 「お初にお目にかかります。――嬴政王子様」  彼のよそ行きの紫苑(しおん)の衣が、ふわりと夜風になびいた。
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